Sunday, August 15, 2010

旅

自分の国へ帰る前日、航空会社から急に連絡があった。パイロットが急に来れなくなってしまったため、飛行機は自分で操縦していって欲しいとのことだ。日本からマレーシアの間だけ、自分たちでうまく移動したらその後の乗り換えの便はちゃんと用意してあるとのことだ。

運良く僕たちのグループには飛行機の操縦許可証をもっている女の子が一人いた。その子は、「ペーパードライバーだから無理ですよ」と言っていたが、僕たちはどうしても家に帰らなくてはいけないから、その子に頼るしかない。

航空会社の説明では、マレーシアの空港についたら、空港のセキュリティーの人たちを振り切って入国審査までは、ちょっとイリーガルに突破してくれとのことだった。「なんて無責任な!」と内心怒り狂っていたが、セキュリティーは入国審査を突破した人をゲートの外まで追うことは法律的にできないらしい。異国の地の空港で、問題を起こすのは心配だが、今まではこのやり方でなんとかなってきたらしい。

結局、当日は他の乗客はなく、僕たちのグループ5人だけが、飛行機に乗り込んだ。航空会社もこれを見込んでいたのか、他の人たちには知らせていないだけなのか、小さなまるっこいひょうたんのような形をした小型機を用意していた。表面は、サツマイモのような赤紫で、とても民間機には見えない。

僕たちはそのズンドウの飛行機に乗り込み、仲間の一人の女の子の操縦に身を任せて海の上を飛び始めた。すごく天気がいいが、日本の上空は日本の自衛隊の空域や、米軍の空軍専用の空域があって、民間機はそこへはみ出してはいけないことを思い出した。急にそんなことを思い出しても、空には色もついてなければ、線も引かれていない。一度空へ出てしまうと、どこならば飛ぶことが許されているのか知りようもない。軍の飛行機に追われるのは嫌だなと思いながらも、とりあえず誰にも気づかれないことを祈って、ただまっすぐマレーシアを目指して飛び続けた。空域のことなど気にし始めると、不安でもあったが、空から見える景色はすばらしかった。しかも、いつもみたいに雲の上の人間がとても住めないような、マイナス40度の空の中を飛ぶ必要もないから、海のなかの魚がみえるぐらいの高さを飛んだ。

普通にネットで航空券を買っただけで、どうして法律違反になりそうなことをしないといけないんだと思ったが、案外こういう自由も悪くない。太陽が細かく照らし出す水面が美しかった。

いよいよマレーシアの都市が見えてきた。予想外に大きな都市のようで、ピンクの高層ビルがたくさん建っている。そのままの低空飛行だと、ときどき高いビルのてっぺんにこすりそうになる。「もう少し高いとこを飛ばないとぶつかる」といっても、操縦士の女の子は、「この方が、空港が見えたときに着陸しやすい」という。しばらくすると、さすがに彼女もあぶないと思ったのか加速しながら若干高度を上げてくれた。

そしていよいよ空港が見えてきたが、管制塔の連絡とかやり方はいっさい習っていない。そもそもどの機械で連絡したらいいのかさえわからない。着陸できるかどうかだってわからないのだから、管制塔と連絡している余裕はない。正規の手続きを踏んで、着陸していたら、近所のピンクの建物にぶつかってしまうかもしれない。そう判断して、とにかくルールは無視して着陸することにした。

強い衝撃とともに、丸っこい紫の機体がなんとか着陸したが、すぐに管制塔の方から鞭をもった眼帯の女が護衛の男二人を従えてすぐに僕たちのところへ出向いてきた。その姿を見たときに、航空会社の言っていたことはこういうことだったのかと悟った。仲間に「走れ!」と指令をだし、一斉に飛行機を飛び出し、空港の中へと走った。

仲間のうち二人はその場で捕まったが、そのおかげで自分と残りの二人は空港の中まで駆け抜けることができた。空港の中は案外混んでいた。入国審査のカウンターの付近はたくさんの人であふれていた。その中にうまく紛れ込み、ずる込みを繰り返してなんとか入国審査のお姉さんのところまでたどり着いた。

パスポートをとりあえず見せたものの、入国審査の用紙に住所や名前を書き込んでくれと言われるが、他の国では見たこともないような大きな用紙だった。これにいちいち記入していたら追ってきた男に間違えなく捕まってしまう。既に、このステップをうまく切り抜けて向こう側へたどり着いたトーマスが一瞬視界に入った。追っ手はそこまではいくことができない。そのためには、このお姉さんにここを通してもらうしかない。しかもマレーシアなのに、なぜか北欧風の金髪のお姉さんだ。

とっさに思いついた一言が、「君がコサインの二乗だったらいいのに」という言葉だった。「え、なんで?」という顔をして彼女は僕を見ている。なんて意味不明なことを言ってしまったのだろう。しかし、とりあえず意外性のある言葉で、相手の興味は引けたようだ。そして、通してもらうために、「僕がサインの二乗だから、二人を足したらどんな時でもひとつだ」と決め台詞を言い放った。なんだか、意味のわからない言葉は彼女の心をとらえたようで、快くパスポートにはんこを押してくれた。

カウンターの脇のガラスの扉を通り抜けるとトーマスが待っていた。しばらくそこで、もう一人がやってくるのを待つことにしたが、結局だれも現れることはなかった。

Sunday, May 2, 2010

くるくる病の悲劇

世の中には非常に珍しい病気がある。「くるくる病」と呼ばれるその病気は、最近になって急に増えている。そして、何人もの人が死んでいるという話だ。体の一部を引っ張ると、くるくると硬化した体内の組織がどこまでも出てきてしまう病気だ。皮膚をつまんで、少し引っ張ると、体内の奥底まで組織がつながっており、ひゅるひゅると皮膚の裏側の組織とから血管、内蔵の一部までもがすべてひと塊になってとれてしまう。症状の軽い人は、10センチぐらいの細い糸のようなものがとれるだけだが、中には何メートルも直径1センチ程度の紐がでてきてしまって、心臓などがつながっていた場合には、それを取ってしまうと死んでしまう。少なくとも、そのスパイラルの紐を引っ張っているときには痛みはない。多くの場合、それほど長いものがとれることはなく、死にいたることは稀である。微生物が組織を硬化させることが原因だと考えられているが、どうもその微生物というのは我々の地球に存在する細菌のようなものではなく、どうも金属的なものでできている生物らしい。

オレの担当するこの地域では、一週間で既に12人もの変死体がでている。皆「くるくる病」による被害者だ。ボスにこの地域の様子を見てきてくれないかといわれ、オレはついに一つの母子家庭を突き止めた。少し神経質そうな母親と、登校拒否の小学生の少年が二人で暮らしている家庭だ。すべての死者に共通していたのは、この家庭となんらかの関わりを持っていたということだった。その家庭を訪れた人たちは、皆「くるくる病」で変死を遂げていた。

今回のミッションは、変死体の原因を探るため、この母子家庭を調査することだった。念のため、調査に向かう前に皮膚の1ミリ下に金のマイクロメッシュを移植してもらい、なぞの微生物が体内に侵入しないようコーティングを施してもらってから、現地へ向かった。

オレは母親の方に自己紹介をし、少年と少し会わせてもらえないかと頼んだ。少年は人と関わることを嫌い、学校へ行くこともやめ、家でゲームばかりしているという話だった。実際に会って話してみると、少年は小学生にしてはずいぶん大人びており、明るい性格の少年だった。少年の勧めるがままに、対戦ゲームを一緒にやることにした。ゲームをするのは久しぶりだったが、半ばサイボーグ化しているオレは、ゲームで少年をやっつけ尊敬を勝ち取った。

しかし、ゲームの途中で母親の様子がおかしいことに気がついた。母親はいかにも普通を装っていたが、他人が自分の息子と交流を持つことが精神的に耐えられないといった様子だった。その様子から母親の子を思いすぎる気持ちが、他者に対する憎しみと変わり、なんらかの理由で最近の変死体と関係しているようだった。しかし、いったいどうやって母親は訪問者達に「くるくる病」を埋め込んでいるのかは、その場の状況からはわからなかった。

様子がおかしいことで、オレはやや不安になり、その場を去ることにした。去り際に、「ぼうや、また今度勝負しような」と少年に言い残した。そうすることで、少年はまたオレに会いたいと思うだろう。少年思いの母親は、息子がオレにまた会いたいと思っていれば、すぐにおれを始末しようとは思わないだろう。

しかし、一抹の不安を抱えながらオレはその家を出るとともに、一目散に基地へ走って逃げることにした。なんらかの追っ手が後をつけてくるのを感じることができた。直接姿を見ることはできなかったが、おじさんの顔をした1メートルぐらいの背丈の生物が5人ぐらい後をついてきているようだ。

基地のあるホテルへ向かうため、途中で透明なエレベータに乗り込んだ。その瞬間、今まで隠れていた小さなおじさん達がいっせいいに乗り込んでこようとしてきた。おれは、エレベータの中に付いているシャワーを水力全開で浴びせかけ、なんとか誰も入って来ないうちにドアを閉めることができた。しかし、シャワーの水はもう残り少なくなっていた。透明なエレベータの壁にへばりついている小さなおじさん達は、まだなんとかエレベータを壊して中に入ってこようとしていた。オレは、冷静に自体を見守っているエレベータガールに「3階をお願いします」と丁寧に告げた。

上の階につくと、広々とした真っ白な床の部屋にでた。上空には青空が広がっている。3メートルぐらいの金箔の薄っぺらい人間がそこには何人かいた。金箔の人達は、とくに何かをオレに話すのでもなく、単にジャンプして空中を舞っては、また地面に落ちてきた。これもあの母親がオレを「くるくる病」に感染させるために仕組んだことかもしれないと恐怖を感じたが、特に攻撃してくる訳でもなう、オレはただそれにぶつからないように次のエレベータを目指した。

エレベータで自分の部屋がある上の階にたどり着いた。廊下を数人の女の子達があるいていたから、「今、外にいると危ないかもしれない」と教えてあげた。状況を知らない彼女達は、オレの助言など気にせずそれぞれの部屋に無言で帰っていった。

部屋で落ち着こうと思ったら、左の人差し指の先が少しはずれていることに気づいた。そのはずれている部分を引っ張ってみると、指の中の方の組織が一緒についてきた。痛みはないが、指が失われてしまうのはいい気分ではなかった。医療班に見てもらおうと、医者達のいる部屋へ向かったが、「くるくる病」の専門医は電話をしていてなかなかオレの相手をしてくれない。

たいていの「くるくる病」は数10センチぐらいまでの感染部位を取ってしまえば進行は停止する。まったく痛みはないから、少しずつ引っ張っていった。電話をしながら医者は、それでいいとオレに目配せした。しかし、引っ張っても引っ張ってもスパイラル状にオレの左腕の中の組織はつぎつぎの体内から出てきてしまう。さらに続けていたら、ついに左腕はすべてなくなってしまった。医者は少し驚いていたようだが、100ドルぐらいのお金のことについて、小銭を稼ごうといつまでも電話で話し続けていた。しばらくすると、「命に別状はないから、そのまま続けてすべてひっぱり出すように」とオレに指示した。より体内の奥の方の組織がひゅるひゅると抜けていくうちに、そのスパイラル状の組織の直径は1センチぐらいの大きな塊になり始めていた。そして、ついにその先にオレの頭蓋骨の一部がごりごりとした感触のまま繋がって体の外に出てきた。頭蓋骨が出てきたということは次は脳かもしれないと思うと、いっそう不安になった。

しかし、なぜ金のコーティングをしたオレの体を、ここまで浸食できるのだろうか。頭蓋骨の中身を砕いてみてみると、薄い金の膜をさらに編み直した模様のようなものが入っていた。これは単なる細菌の活動というよりは、知性のある生物が意図的に作り出したアートであり、金のメッシュでコーティングするなどという原始的な方法をとったオレたちをあざ笑うメッセージであることが伝わってきた。どうやら、「くるくる病」というのは、単なる特殊な微生物の活動ではなく、人間が想像していなかったような、微小な知的生命体の組織的な行動のようだ。脳に感染している知的生命体は、直接オレの脳を介して、すべてを教えてくれた。少年と母親の役割や、人類の未来についても。しかし、オレは誰にもそのことが話せないまま死んでしまった。

Tuesday, February 23, 2010

救世主

僕は大きな団地の傍らの空き地に住む。たいていのものはあるけど屋根がない。子供がかくれんぼしている。今は帰省のシーズンで友達はみんな帰っているけど、空き地を散歩していると幸せだなぁとため息がでてしまう。団地の建物のわきの階段を登り、高いところへ出ると眼下に広がる高速道路が見渡せる。

ハイテクの車が2台スノーボードのハーフパイプみたいなことをしている。そのうち1台は空中に舞って道路にもどれず、どっかに落ちていってしまった。もう1台の方は15階にいる僕のところへふんわりと飛んできた。

この国は三大権力者の悪魔によって統治されていて、その車の人はそのうちの誰かの使いだということはすぐに感づいた。僕の存在をかぎつけた誰かに偵察として送り込まれたに違いない。僕はなにも気づかなかった振りをして「なんてかっこいい飛び方のできる車なんだ!」とか褒めながら、トイレに行く振りをして一気に階段を駆け下りた。

僕はケータイで情報部と連絡を取った。僕のケータイは便利なことに空を飛ぶ機能もついている。ちょうど一階までおりてきたところで、また別の政治組織の悪魔の使いがいた。やっぱり僕を嗅ぎつけてきて探しているようだ。ジープに乗った彼女達は「この団地の上の方で何か見なかったか」と尋ねてきたが、「知りません」と答えて無関係を装った。

テレビでは3人の魔物たちは視聴率争いをしていた。どいつもこいつも世の中ではヤクザみたいな怖い組織をいっぱい持っていて、悪いことばかりしているのにテレビの中では面白い人たちだった。自ら人を笑わすことに体を張り、バラエティー番組の司会者を務め、部下達がいつもゲストだった。そしてみんな魔物だから顔がでかくて化粧が濃い。

僕はケータイで飛びながら部下と連絡を取り続けテレビを頭の中で幻視していた。さっきの15階の現場に空中からこっそり戻って様子を見てこようと思って、空中で方向をおそるおそる変えた。

なかなかケータイで飛ぶのは難しい。誰かと話している間は、上昇はできる。ただし、下降の機能はついていない。電話を切るしかない。ケータイを切ってしまったら一気に地面に叩き付けられるだろう。すでに結構な高さまで来ている。下におりるためには、落ちている間に他の人に電話をかけて落ちる前に取ってもらうしかない。この際117でもいい。地面に衝突するのは怖いけど覚悟を決めた。

ケータイを切った。
僕は落ちていかない。
ゆっくりと下がっていくが、妙にふわふわした余裕がある。
体の中に魔力がみなぎっている。

自分が救世主であることに気づいた。これから悪魔たちを退治する。

空から降りていく私を見ている人間たちが見えた。

Friday, February 19, 2010

みたことのない映画

映画が始まった。ベイブという名前の老人の話。彼は頭がおかしい。彼は自分の頭の中に架空のファミリーを創っていた。彼はそのファミリーを愛していた。しかし、彼の頭に住んでいる架空のファミリーは彼が信じているような人間の家族ではなくて、ネズミの家族だった。

映画はクライマックスに至り、彼の想像の妻が死を迎える場面になった。彼は言う「今までさんざん妻が苦しみ汚物にまみれていくのを見せられてきた。今はやっと死んでくれて、悲しいというよりもなぜか少しほっとしている。」

場面は替わり、彼の妻(彼の信じていた人間の姿をしている)がベッドに横たわっている。彼女は小さなネズミの子供を出産した。子供は老人ベイブ宛のメッセージと共に生まれてきた。妻はそのメッセージについて「子供達」は「ファミリー」で置き換えた方が彼にとってわかりやすいだろうと言った。そのメッセージは老人ベイブの死を慈しむものだった。その子供の誕生はベイブの死と同時に訪れた。そして、彼がたとえ死んだとしてもその空想のファミリーは永遠に生き続けた。

ケーヤク

僕は女の子と英語でけんかしていた。僕はコーフンのあまり自分の言っていることが一語だけ日本語に置き換わっていることに気がつかなかった。
「勝手に意味もわからないのにケーヤクなんてしないでくれよな」
「うん。でも私ケーヤクの意味が分からないの」
「だから意味が分からないんだったらケーヤクしちゃだめだって言っただろ」

イシタニハルヒロ現わる

彼と再会した。彼は僕の運命らしい。僕たちの再会は小学生のままで起こったようでいて、しかも21歳の精神性をそなえていた。彼は僕の天才性を認めてくれたが、それは経済学的な意味においてという制限がついていた。

僕は眠っていた。朝がくる頃みんな一度寝場所をかえる。薄暗い部屋に差し込む朝日の下で誰もが枕を持ってうろうろして自分の寝場所を見つけるのだ。僕は元の自分が眠っていたふとんで眠っていたかった。そこにはよくわからない少年ふたりがやってきて、僕のふとんを占拠して彼らはそこで愛し合った。それがルールだからしかたがない。僕はふとんの中で山芋をかじり鼻水をたらした。

そしてイシタニハルヒロとめぐり逢うのだ

彼の存在は僕の感情に直接働きかけてきた。
「大丈夫。僕にはわかるから。」


何かから解放されたような気がした。でも何から?

百年のSolitude。

Thursday, February 18, 2010

エクサス株式会社

家を出てまたいつもの川へ向かって今回は家族とともに歩いた。川へ出る途中、僕たちはアリの巣を見つけ黒いアリに混じって水色のアリが穴からときどき出てきていることに気づいた。

僕は水色のアリは軍事用で目的地に着いたら爆発するのだと母に教えた。水色のアリを横目に川沿いを散歩していると、突然変な人が僕の傍へ寄ってきて「エクサス代表取締役の○○です」と言って名刺をくれた。僕はエクサスなんて会社は知らなかったけど、『わぁ、あの有名なベンチャー企業エクサスの社長さんなの?』と勝手に思い込んで感激したりした。

「エクサスでは水色のアリを利用した最新の運搬システムを開発しました。従来のアリのネットワークを利用しているのでとても速いのです。」と説明した。

『なーんだ、軍事用じゃなかったのか』と心の中でつぶやき落胆した。しかし、意外にもその人物は僕の好きなタイプの人間だった。僕は初めて他人の人格を面白いと認めた。そういう出会いは誰もが求めていながら本当にラッキーな人にしか起こらないたぐいの出会いなのだ。

僕は家族を見捨て、彼と話をしながらどんどん歩いた。気がつくと僕たちは公園のど真ん中にいた。

公園は戦場だった。出口は全部で五カ所あり、それぞれに別のグループの凶暴そうな人たちが、鉄球とか大きなハサミを持って待ち構えていた。要するに僕たち二人は公園の真ん中で万事休すだった。

エクサスのおじさんもとっさに僕と同じことを思ったのだろう。女王様風のお姉さんが一番弱そうだからそこから逃げようと一斉に僕たちは走り出した。彼は上手く逃げられたが僕は女王様の鎌に捕えられてしまった。

「こういうときはなんて言ったらいいか知ってるかい?」と女王様がお尋ねになった。僕は
「一人で逃げたあの卑怯者を殺すためにあなたの仲間にしてください」とお願いした。

その晩僕はとってもエッチな女王様と一緒に眠った。

すいそう

すいそうの中はまるでからっぽだった。僕はからっぽの中をサメと一緒に泳いだ。まるで水中という気がしない。だからからっぽなんだろう。僕のほかには2匹のサメが泳いでいた。僕はサメのヒレにつかまって泳いだ。サメはヒレがひきちぎれそうで悲鳴をあげた。僕が天井の近くを泳いでいたら、はるかかなたのすいそうの底からこわいおじさんが見上げている。こわいおじさんは僕に天井に取り付けてあるテレビからビデオテープを取り出すように命令した。ぼくはこわいおじさんがこわいので言われるままにした。泳ぐのになれていない僕はおたおたした。おたおたしているとこわいおじさんに怒られるのではないかと思って、ますますおたおたした。サメがヒヒーッと鳴いた。

暴力

イタリアの広場で天使たちがいじめられていた。天使は総勢十人といったところで、皆縛られていた。広場にはたくさんの人間達が天使がいじめられるのを見に来ていた。天使というのはあたりまえだが白い服を着ていて、身長は5メートルぐらいだ。人間より少し偉いのだから5メートルぐらいが妥当なのだろう。いじめている方は天使には見えなかったけど、とても凛々しい姿をしていた。いじめるといっても縛られている天使達を後ろから金棒で叩くだけだった。僕は前の方に立っている天使たちはあまり叩かれていないから不公平だと思った。その意思が彼らに伝わったのか、横や前からも叩くようになった。そのうち叩いていたら天使たちを縛っていた紐が切れてしまった。その瞬間、天使達のパワーが炸裂して世界中の機械が動くようになった。

Wednesday, February 17, 2010

マジカルダンス

俺たちは3人だった。敵の基地から脱出をしようとしているところで、すでに二階まできていた。一階の出口にさえ着けば生きて帰れるのだ。一階の出口には最後の一人の衛兵がいて、そいつさえやってしまえばこの任務は無事に終了というわけだ。正真正銘にそいつは最後の一人というやつだった。今までこの戦いの中で幾度となく俺達は衛兵達を始末してきた。非常に特殊な戦闘の訓練を受けてきた俺達にとってこんな仕事は容易いことなのだ。

しかし不思議なことに俺は初めて恐怖というものを感じていた。他の二人に言ってもあいつらには絶対理解できないだろう。そもそもあいつらには恐怖が何かなんてことはわかっていないんだ。俺だってほんの一分前に初めて恐怖というものを感じたばかりだった。もしあいつらにそんなことを言ったら俺のことを見損なうだろう。今までいつも俺が先頭をきって敵をやっつけてきたのに、どうしたんだ俺は?

あいつらに恐怖を悟られないように「今回はお前に任せた」と言って吉村に仕事を押し付けた。内心、俺はあと一人で今回の仕事は終わるから、わけのわからない恐怖はとりあえず無事に外に出てから始末すればいいさと思っていた。吉村は「まかせろ。ついにあの手を試してみるときがきた」とか言ってはしゃいで一階の踊り場へ出ていった。

おれは『あの手』を今まで見たことがなかったから、それが実際にどんなものなのか興味があった。『あの手』というのは俗にいうマジカルダンスのことだ。一応どういう理屈でそれが成功するのかは知っていた。しかし、それがあまりに頼りなく思えることから俺はマジカルダンス習得コースの対人格闘技特論の授業には参加しなかったのだ。俺達のスクールには格闘マニアみたいな奴が山ほどいて、そいつらは不必要にいろんな技を身に付けたがる。吉村もそういう奴の一人だ。

吉村はマジカルダンスを始めた。理屈はこうだ。まず前提として銃というの狙わないとあたらないということになっている。だから狙いが定まった瞬間に体をその照準から外せば弾にあたらない。もし相手が乱射したらどうなるのかは俺は知らない。そして、マジカルダンスはあまりに優雅だから相手はそんな単純な理屈で銃の弾がかわされているとは気づかずに、ますます慎重に狙いを定めてしまうのだ。衛兵は狙いを定め一発目を発射した。吉村はさもダンスの自然な流れであるかのようにマジカルターンをひゅるりときめてそいつをかわした。この変態的な動きで弾をかわされた衛兵は動揺したように見えたが、すぐに二発目を構えた。その発砲と同時に吉村の右足が相撲取りがするように高々と持ち上げられた。さすがにこんな馬鹿げたダンスで弾がよけられては衛兵も動揺が隠せなかった。マジカルダンスの理屈ではこれだけの至近距離で的をはずすというのがさらなる精神的ショックを与えるというのだ。吉村はすでに銃を奪い取るのに十分なほど衛兵に接近していた。しかし吉村はまだ三発目を待ってステップを踏んでいた。あいつは調子に乗りやすい性格だった。この二発の成功ですっかり興奮してしまったのだ。

ようやく三発目をかわしたところで吉村は満足して衛兵の銃を奪いにかかった。その瞬間、俺は完全に安心しきってしまった。ああ、ようやく今回の仕事も終わりだと。陰で待っていた俺達二人は一気に突撃した。吉村を援護しようと階段を一気に飛び降りようとしたとき、空中で銃口がこっちに向いているのが見えた。階段を銃声が鳴り響いた。俺は不意をつかれておもわず着地に失敗して転んでしまった。でも体がどこも痛くないからどこも弾にあたっていないんだと安心した。もう一人の奴も大丈夫そうで銃を奪い合う吉村をすぐに援護に向かった。俺は倒れたまま床に血だまりができているのを見た。誰の血だ?変だ。誰も怪我をしていないのに。俺もすぐにこいつをぶっつぶしてここから出てやろうと思って立ち上がろうとした。体が動かない。頭が生あったかい。何で俺が撃たれてるんだ?頭撃たれたら死んじゃうじゃないか。くそっ!

オランダから京都へ

6年、7年?それくらいの間会っていない彼とオランダの夜の危ない街を歩いていた。そして、とりわけ危険なストリートを通り抜けて向こう側へ行こうという、調子にのったことを考えていた。その向こうにはレッドランプが暗闇の中で怪しく光っていた。僕らの無謀な試みは彼がめちゃくちゃ強いということと、僕が自作のレーザーカッターの切れ味を試してみたいという好奇心からきていた。

僕らは走った。すぐにゲームに出てくるチンピラみたいなのが追いかけてきた。壁からは緑色のガラスでできた足がたくさん出てきた。ガラスの足は僕の行く手をはばみ、それに触れてしまった僕は血だらけになった。ぜんぜん痛くないのにわけのわからないまま血だらけになった僕は恐怖を感じていた。何とかしないと。ふとストリートの深淵や反対側の壁に目をやると緑のガラス足はそこら中に仕掛けられていた。僕は観念したのだろう。自分のすぐ後ろに迫ってきているチンピラ達をレーザーカッターで斬りつけて、ストリートの入り口へと逃げかえった。彼の方もかろうじて生きて戻ってきたという感じだった。

一度ストリートの外へ出てしまうと、ストリートは静まりかえり何もなかったかのように見えた。遥か彼方のレッドランプがやはりまだ妖しく光っているのが見渡せた。

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それは夢だった。ふと我にかえった僕らは京都にいた。
「あの時、オレたちは何か恥ずかしいことをしなかったかな?」
と、彼は僕に訪ねた。死にそうになって必死に逃げた時カッコ悪かったんじゃないかなと心配しているのだ。
「最初にあの道を通り抜けられると思った思い込みが恥ずかしかったんじゃないかな。」
と僕は答えた。

僕らは雨の中を歩いた。彼はもっと強くなろうと1メートルはある鉄アレイを両手に一つずつもって歩いた。僕はそのうちのひとつをこっちに投げてくれと頼み、小指一つで受けとめた。しかし、鉄アレイだったはずのものは真っ赤な大きなカサに変わっていた。

もう雨は降っていない。京都の最も美しい晴れた春に風景は一変していた。

「どうして僕たちは一緒に同じ夢を見たんだろう。そういうのって変だと思うんだけど。」
僕と彼の夢にはまったく食い違いがなかった。僕は夢の中の僕を演じ、彼は夢の中の彼を演じていた。違いはそれだけだった。僕たちは確かに一緒にオランダでストリートの深淵を目指したのだった。

やがて僕らは京都の山の散策道に差し掛かっていた。実際、僕らは上った覚えのない山道をくだらなければならなくなっていた。僕も彼も最初から山の頂上にいたのだ。

鴻谷さんが登ってくるのがみえた。僕は彼女が誰と一緒なのか気にしていたと思う。どうも妹夫婦と一緒みたいだったから安心して声をかけることができた。それは僕がオランダから帰ってきて初めて会う鴻谷さんだった。彼女は僕が京都に戻ってきたことを知らなかったから驚いていたけど、さっさとどこかへ行ってしまった。

すばらしい天気の中、僕は山道をくだった。赤いカサを広げると風に乗って飛んでいけそうだった。風をつかまえて30秒ぐらい宙に浮くこともできた。そして、突風が吹いたときには僕はもう戻れないくらい高く飛ばされていた。下から声が聴こえた。小さな女の子の声だった。

「あっ、帽子に象が入った。」
僕は思わずカサから手を放した。一瞬だけ小指に乗るくらいの象が見えた気がしたが、それが何色だったのかはわからない。僕の記憶はそこで終わっている。

読書

僕は図書館からご機嫌で三輪車に乗って帰ってくるところだった。あとは長い広々とした道をまっすぐ行けば家につく。空は晴れていて気持ちがよかった。白鴨と青鴨の集団が昼寝をしていた。

僕がその直線の真ん中あたりまできたとき、突如空が蝶々でいっぱいになっていた。僕は、蝶々の集団のあとには必ず蜂の集団がやってきて、さらにその蜂を食べに蜘蛛の集団がやってくるということを知っていた。思えば、鴨の集団も何らかの兆候だったのかもしれない。僕は蜂が現れる前に急いで家に帰り着こうと思い、全力で三輪車をこいだ。しかし、蜂の集団はあっという間に現れ、僕が家についたころには蜘蛛が現れ始め、蜂の死骸だらけの景色となる一歩手前というところだった。僕は数カ所蜂に刺されてしまった。

家に着き、僕は部屋にこもって借りてきた本を読もうとしたが、弟が帰ってくる音が聞こえたから部屋のドアの鍵をかけた。家が古く鍵は十分にはかからなかったが、簡単には開くまいと思いそれで満足した。ところが弟は部屋へ勢いよく飛び込んできた。僕はいきなり弟に殴り掛かり倒れ込ませた。そして段ボールごと重い本を投げつけた。そのとき本からでっかなKという文字が飛び出した。弟はイタイイタイと言っていたが、隙をみせては自分が危険だと恐れるあまり、弟の上に乗っかっている本の上からさらに殴りつけた。僕は分厚い本の上から殴っていたからそんなには痛くないだろうと思っていたが、弟はイタイイタイとかわいそうな声で言っていた。僕は弟がかわいそうだと内心思っていたのに殴りつづけた。やはりときどきKという文字が飛び出した。でもちゃんとやっつけておかないとこっちがやられてしまうと思って、僕は怖かったのだ。怖いからこんなに暴力的になった。いつのまにか、弟の体は本の中に入ってしまった。その大きくて思い本は血を流していた。僕は叫んだ「今ごろあいつは本の中で、《じゃじゃじゃじゃーん》ってベートーベンを聴きながら痛がっているんだよ。早く出てこい。殴られる覚悟はできた。」

Sunday, February 14, 2010

透明な壁

僕と彼女は透明な壁の前に坐っている。僕らはまだどちらも壁の向こう側には行っていない。二人は壁の手前の両端に坐っている。僕たちは無言だったけど、この透明な壁の向こう側のことを考えている。そして、そのことをお互いに知っている。

ふとした瞬間、壁の向こうに電車が見えた。海の上を水しぶきをあげて超高速で走る電車だった。僕は「東京からブラジルまで直通の電車が開通したんだ。海の上を走って2時間で着く」と感じた。もちろん彼女も同じことを感じていた。彼女は僕が彼女がそう感じたと知っているということさえ気づいていた。そのまま僕らはじーっとしていた。

やがて日本人のおばさんがやってきて冗談めかしたフランス語で挨拶をしてきた。おばさんに向かって彼女はフランス語でまくしたてた。彼女があまりにフランス語が上手だったから、僕は少しおどろいた。彼女の言いたいことは「この街はあの街より街だ」ということだけだった。それでもそのことを伝えるためにたくさんの言葉を費やした。僕は「フランス人てどこか欠陥がある」と思った。しかし、彼女がそう思っていたかはもはや自信が持てなかった。

Saturday, February 13, 2010

【ブーブー】

僕は高校生に戻って伊藤先生の国語の授業のようなものを受けていた。その日の授業はある小説の最後の場面を解釈するものだった。その小説は工事現場風の文体で書かれていて、カタカナは皆抽象的なオレンジ色をしていた。僕たちは高校生なりにその最後の場面をめぐって活発に議論した。いつのまにかクラスのみんなの意見はまとまり始めていて、みんな【ブーブー】だと主張した。リアルな音でみんなが【ブーブー】だと言っていた。僕は【ブーブー】ではない【ブーブー】のはずがないじゃないかと心の中でつぶやいた。みんなに僕の意見を伝えたかったが、大歓声の【ブーブー】につぶされて結局どうすることもできなかった。

Friday, February 12, 2010

想像と力

新しいスペースシャトルが飛んでいく。従来のスペースシャトルとはまったく異なる発想でそのスペースシャトルは造られた。昔のものは「ひたすら水素の燃料を燃やして力ずくでも宇宙へ行くぞ!」というコンセプトの基に造られていた。しかしこの新しいスペースシャトルは単にスペースシャトルの属するガリレオ座標を地球の座標から解放してやることで重力に打ち勝つのだ。必要なのははじめに座標をずらすためのインパクトだけだった。あとは自然にどこまでも飛んでいくのだ。僕は無音で空の彼方へ雄大に流れずらされていく巨大なスペースシャトルを眺めた。その巨大な質量が重力から解放され空に描いた曲線は美しかった。そのスペースシャトルには一人の老人が乗っている。僕は彼のことを思い浮かべた。彼が子供のように眠っているのが見えた。スペースシャトルにはじめのインパクトを与える装置が燃えていたが、たくさんのスタッフがハイテクの消火器で迅速に炎を処理した。それを見て僕は老人のことをうらやましいと思った。たくさんの人間がそれに携わり築かれたその人類の希望は彼だけが体験することができる。僕は再び老人を思い浮かべようとしたが、超高速で宇宙を滑っていくスペースシャトルに僕のイマジネーションはなかなか追いつくことができなかった。僕のイマジネーションは真空を旅し、地上に残された僕の肉体は抜け殻となった。立ち尽くす僕の目の前にハリウッド風ジャーナリストが現れこう言った。
「人々が地球の未来を思い描けるように僕は写真を撮りたいのです。」
僕は始めてジャーナリストという人に好感を抱き、彼らの仕事を理解した。

ファッション

マンモスと同じ大きさのエンジンがゆっくりと空を飛んでゆく。僕はその重低音の単調性と均一性に耳を傾ける。耳元で誰かが囁く。それは純粋なオカマ声で「それが宗教の問題だったらいやだわ」と言う。僕の眼前は暗闇となり3人の女の子が現れる。彼女たちはおでんを食べ、議論のようなおしゃべりを延々と続ける。彼女たちはそれぞれ僕の一貫性のない意見の象徴のようであり、またはんぺんでありチクワブでありタマゴでもある。意見とは、洋服のようにファッションであり一度に一着しか身につけて歩くことはできないが、誰もがクローゼットにたくさんの服を持っているように、僕は暗闇の中にたくさんの女の子を持っていて、彼女たちのおしゃべりこそが個人的な主張を超えた本質なのだと思った。

Thursday, February 11, 2010

猫は誰が殺したのか?

山の向こうの国から老婆がある漁村にやってきて少年に紙芝居を見せた。その紙芝居の舞台はまさにその漁村にそっくりだった。

老婆の話はこうだった。猫の好きな少年がある漁村に住んでいて、彼が猫好きなのを知っている近所の漁師が彼に猫をあずけた。しかし、漁師が帰ってきたときには猫はいなくなっていた。少年は泣いて誤り、猫がいなくなったのを心の底から残念に思っているようだった。数日後、猫の死体が井戸から見つかった。その猫は、その猫好きの少年によって蹴り殺され、井戸に捨てられた。そういう話だった。

その話を聞いた少年は、「どうしてその少年は猫を殺したのだろう。あんなに猫を愛しているのに。」と疑問に思った。そしてその殺された猫を哀れんだ。その少年は猫への同情心から猫を愛するようになった。かれの猫好きは漁村で有名になった。そしてついにその日が訪れた。近所の漁師が彼に猫を預けにきたのだ。かれはその猫を大切にし、あの紙芝居の少年のように殺したりはしないとこころに誓った。

しかし後日、やっぱり少年は猫を蹴り殺してしまった。そこで少年は紙芝居のもっとも不可解な部分を理解した。